調査研究結果

医療福祉施設における産業医活動~高知産業保健推進連絡事務所

2007年1月

高知産業保健推進センター

はじめに

医療福祉施設における産業医活動の現状の一側面として、2006年度に衛生管理者を対象として実施した産業医活動調査*の調査資料のうち、医療福祉施設からの回答について別個に集計し、全業種による結果と比較した。なお、集計は高知大学医学部学生の演習の一部として実施し、全業種との比較データを加えて考察した。

【産業医活動に関する調査報告 高知産業保健推進センター:2006.6】

対象と方法

調査対象者は、高知産業保健推進センター(以下、推進センター)の情報誌を送付している764事業場の衛生管理者または衛生管理担当者(以下、衛生管理者)であり、情報誌送付時に調査票を同封しFAXによる回答を依頼した。
調査は2005年9月から2006年1月にかけて実施し、衛生管理者からは284名(37.1%)の回答を得た。業種欄に“医療福祉”とした46事業場(回答事業場の16.2%、以下、医療福祉)を今回の分析対象とした。
これらの施設の労働者数別分布は表1のとおりであり、100人以上の事業場が70%を占め、回答事業場全数(以下、全業種)の41%に比べて多かった。

表1 業種別労働者数別回答数
労働者数 -49 50-99 100-299 300-999 1,000-
医療福祉 1 13 29 3 46
( 2 ) ( 28 ) ( 63 ) ( 7 ) ( 100 )
全業種 54 115 100 13 2 284
( 19 ) ( 41 ) ( 35 ) ( 5 ) ( 1 ) ( 100 )

結果

産業医の選任状況

医療福祉の産業医選任率は、表2のように91.3%であり、63%は専属産業医(以下、「専属」)であった。50人以上の事業場のみで比較すると、全業種も選任率は98%(225/230)で差はないが、「専属」の占める割合は、全業種19%に対して医療福祉は63%と高率であった。医療施設では認定産業医の資格をもつ医師が兼務するためと考えられる。
労働者数別には、産業医選任率に大きな差はなく、「専属」選任率も、300人以上は100%と高率であったが、100人未満と100人以上ではそれぞれ54%、66%であり、著しい差は認めなかった。

表2 労働者数別産業医選任状況
労働者数 専属
産業医
嘱託
(開業医)
嘱託
(病院等)
非選任 その他 無記入
医療福祉
施設
-49 7 2 3 1 1
50-99 19 4 4 1 13
100-299 3 2 29
300-999 3
1,000人- 0
29
(6)
6
(13)
7
(15)
4
(9)
46
(100)
全業種 -49 1 10 16 25 2 54
50-99 19 39 36 17 3 1 115
100-299 31 34 29 5 1 100
300-999 4 3 5 13
1,000人- 2 1 3
55
(19)
88
(31)
87
(31)
47
(17)
6
(2)
1
(0)
284
(100)

産業医の活動状況

産業医の活動状況については、頻度及び1回あたりの時間について回答を求めた。活動頻度は、「定期・週」(週単位で定期的)、「定期・月」(月単位で定期的)、「不定期」(年間の回数で回答)に分けて集計したが、「定期・週」の回答はなかった。(以下、全業種の回答についても「定期・週」と「定期・月」を合せて「定期」とする。)また、嘱託産業医の2群の活動状況には差が認められなかったので、一括して集計した。(以下、「嘱託」とする)

活動頻度

産業医を選任している42事業場の活動頻度は、「定期」が11(26.2%)、「不定期」が23(54.8%)、無記入が8(19.0%)であった。全業種では「定期」19.5%、「不定期」59.6%であり、医療福祉では全業種に比べてやや「定期」が多かった。

これを産業医の選任状況別にみたところ、図2のように「専属」では「嘱託」に比べて「定期」が少なく、「不定期」が多かった。医療施設に勤務する医師による兼務の「専属」では、職務のための定期的計画を立てず、必要に応じて随時に関わることになっているのかもしれない。一方、「嘱託」産業医はその多くが福祉施設と思われるが、「定期」が半数を占め、医療福祉の「専属」及び全業種の「嘱託」に比べて高率であった。

図2 産業医の選任状況別活動頻度(定期・不定期)

産業医の選任状況別活動頻度(定期・不定期)

次に、「定期」、「不定期」別に活動回数を聞いた結果を、「月2回以上」、「月1回」、「年3回以上」、「年2回」及び「年1回」に分類した結果を図3に示した。全業種では活動回数に大きな偏りがなかったが、医療福祉では「年2回」が半数近く(産業医選任42事業場の47.6%)を占めていた。医療福祉の特徴かもしれない。

産業医の職務である「衛生委員会」や「職場巡視」には月1回という規定があり、活動頻度の一つの目安と考えられる。これを満たす関与がある施設は11カ所(26.2%)であった。全業種は22.0%(51/230)で、差がみられなかった。

図3 産業医の活動頻度(回数)

産業医の活動頻度(回数)

活動時間

1回あたりの活動時間を1時間未満ないし1時間前後(以下「1時間」)、2時間前後(以下「2時間」)及び「3時間以上」に分けて集計したところ、「1時間」16(産業医を選任している42施設の38.1%)、「2時間」10(23.8%)、「3時間以上」1(2.4%)であった。(無記入等が35.7%) 全業種ではそれぞれ49.6%、10.9%、4.8%(無記入等が34.8%)であり、「1時間未満ないし1時間前後」という短時間の関与が医療施設でやや少なかった。

図3 産業医の活動頻度別活動時間

産業医の活動頻度別活動時間

産業医活動への期待

衛生管理者等が産業医に関与を求める活動を、選択肢による回答を求めた結果、最も多く選択されたのは「健診における有所見者への指導」であり、続いて全業種の場合と同じく「就業上の措置の具申」、「健康診断の実施」が高率であった。その一方で、「健康相談」及び「健康教育」は低率であった。従業員に医療関係者が多いことを反映したものと考えられる。

以下、労働者数別、産業医の選任状況別、活動頻度別に、全業種の結果もあわせて、図4-6に示した。

労働者数別

労働者数別(図4)には、医療福祉についても全業種と同じく、全般的に100人以上の群で50-99人より多く選択されたが、とくに「衛生委員会における助言」や「職場巡視」で差が大きかった。この2つの活動については、全業種の100人以上と比べても15-20%程度高率であった。

産業医の選任状況別

産業医の選任状況別(図5)には、全業種では嘱託産業医の事業場で「健康診断の実施」以外の各項目で産業医の関与に対する期待が低かったが、医療福祉ではそのような傾向はみられず、全般にわたって選択された。「専属」以上に選択された項目もあり、とくに「職場巡視」が高率で、50%を超えていた。
「専属」では、「健康診断の実施」「健康相談」「メンタルヘルス対策」が低率で、全業種と異なる傾向を認めた。産業医の関与を求めない対応システムによるのかもしれない。「嘱託」は項目によって「専属」と異なるものはあるが全般を通して同等の選択がみられ、全業種の場合とはまったく異なる結果であった。医療福祉での産業医活動の位置づけは高く、とくに「職場巡視」が50%を超えていることが注目される。

図4 労働者数別・衛生管理者等の産業医の関与への期待事項

労働者数別・衛生管理者等の産業医の関与への期待事項

図5 産業医の所属別産業医の関与への期待事項

産業医の所属別産業医の関与への期待事項

活動頻度別

活動頻度別(図6)には、全業種と同様に、「健康診断の実施」を除いて「定期」の産業医への期待が「不定期」より大きかった。とくに、「衛生委員会における助言」及び「職場巡視」ではその差が大きく、全数における「定期」の結果をも上回っていた。

図6 産業医の活動頻度別・産業医の関与への期待事項

産業医の活動頻度別・産業医の関与への期待事項

まとめ

衛生管理者等に対する産業医活動についてのアンケート調査資料から、医療福祉施設46事業場の回答を集計し、全業種の結果と対比させながら、その結果を検討した。分析対象とした調査の回収率が低く、サンプル数もが少ないこともあってさらに検討を要するが、全業種との比較を含めた主な結果は以下のとおりである。

  1. 産業医の選任率は91%であり、63%が「専属」産業医であった。全業種との比較では、選任率は差がないが「専属」の占める割合が高かった。選任率、「専属」の割合ともに、労働者数別には差を認めなかった。
  2. 産業医の活動頻度は、月1回以上の「定期」が26%であり、55%は年単位での「不定期」であった。全業種との比較では、「月1回以上」の割合には差がなく、「不定期」の中での「年2回」が多かった。
  3. 産業医の1回あたりの活動時間は、1時間程度が38%、2時間が24%であった。全業種ではそれぞれ50%、11%で、医療福祉がやや長かった。
  4. 衛生管理者が産業医の関与を期待する業務については、「健診の有所見者に対する指導」が最も多く、以下「就業上の措置の具申」、「健康診断の実施」などが全業種と共通して多かったが、「健康相談」や「健康教育」など全業種に比べて低率の項目もあった。
  5. 労働者数別には多い事業場、活動頻度別には月1回以上定期的の事業場で、全般的に産業医活動の関与への期待が多く、全業種と同様の傾向を認めた。一方で、選任状況別には、「嘱託」への期待も「「専属」同様に認められ、全業種とは異なっていた。
  6. 健康管理に関する項目以外では、労働者が多い、月1回以上活動している場合に、「衛生委員会での助言」と「職場巡視」が多かった。また、「嘱託」産業医の事業場で、「職場巡視」への期待が多かった。

以上

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