お知らせ

花粉対策用マスクと産業用防じんマスクの違い

「こうちさんぽメールマガジン」2009.6月号より

労働衛生工学担当相談員 門田 義彦

春になると花粉症で憂鬱になるという人がたくさんいます。今や花粉症は、多くの人がかかっており、日本の国民病といわれるまでになってしまいました。そのため、最近では、花粉対策用マスクの性能の進化が顕著になっています。けれども、こういった花粉対策用マスクを、防じんマスクとして労働の現場で使用することは絶対にしないでください。

確かに最近の花粉対策用マスクは、形も従来のガーゼ型から、顔面にフィットする立体型が登場して、たちまち一般的になりました。また花粉の捕集効率が99%を超える性能をうたう商品も販売されています。おまけに産業用防じんマスクに比べて、価格が安いという面もあります。しかし、産業用防じんマスクは、通常の花粉対策用マスクと比較して、はるかに性能がよいので、健康への高い配慮が求められる労働の現場では、花粉症対策用マスクを着用して仕事をしてはいけません。

産業用防じんマスクは「防じんマスクの国家検定規格」(平成12年労働省告示第88号)というたいへん厳しい規格に基づき製造されています。例えば、粉じんの捕集効率を試験するための粒子の大きさ(粒径)は、0.06~0.25µmと定められています。これは、一般的な花粉の大きさの10~30µmと比較して、非常に小さな粒子です。さらに、厚生労働省の委託を受けた産業安全技術協会は、毎年、産業用防じんマスクを販売店から何点か購入して、規格に定められた性能を備えているか試験をしています。こういった厳しい規格を満足したマスクのみが「検定合格標章」を貼付して、販売することを許されているのです。

産業用防じんマスクと花粉対策用マスクを実際に着用して、漏れ率を試験したデータがあります(田中茂 十文字学園女子人間生活部)。なお、漏れ率とは{マスク内の粉じん粒子数}÷{マスク外の粉じん粒子数}×100(%)で示したもので、数字が小さいほどマスク内部に粉じんの漏れ込みがなく、性能がよいことを示す指標です。この結果を見ると、花粉対策用マスクのうち、ほとんどのガーゼ型(平面)は100%、立体型のもので10~50%程度となっています。これに対し、産業用防じんマスクを正しく着用した場合は5%未満、トンネル掘削現場で最近使われるようになった電動ファン式防じんマスクでは1%未満となっています。このように、産業用防じんマスクは、実際に装着した場合でも花粉対策用マスクに比べて遥かに性能がよいのです。

以上のとおり、花粉対策用マスクも進歩していますが、その性能はまだまだ不十分ですので、労働現場での粉じん対策としては、絶対に使用しないでください。こういった現場では、必ず「国家検定合格標章」の貼付された防じんマスクを着用してください。

なお、産業用防じんマスクでは、その性能は捕集効率によって、85%以上、95%以上、99.9%以上と3段階に分かれています。また、使い捨て式と取り替え式、湿った粉じんに対して有効なものなど、さまざまな性能があり、それらは記号としてマスクにそれぞれ表示されています。現場の状況、粉じんの有害性に応じて、選択して使い分けるようにしてください。さらに、どんなに優秀なマスクも正しく装着しなければ、効果が全くありません。マスクについては、厚生労働省の通達「防じんマスクの選択、使用について(平成17年基発第0207006号)」が出されています。もしマスク等の保護具の選択や正しい使用方法について、わからないことがあれば、お気軽に当センターにご相談ください。

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