お知らせ

クールビズと冷房病

2005年7月

高知産業保健推進センター相談員 高知健診クリニック院長 坪崎 英治

皆様今年も暑い夏がきましたね。

夏といえば熱中症ですが、これによる死亡事故が近年とみに増えているのをご存じですか?毎年医療機関から届けられる数は20名前後なのですが、厚生労働省の把握している数ははるかに多いようです。十年前の平成6年に、この年だけで600人近い方が熱中症で亡くなったと発表されています。それまでは年平均100人前後でしたから大問題となりましたが、この年は異常気象でたまたま大変な猛暑の夏を迎えていたのが原因でした。ところが近年は毎年多く、たとえば平成15年度の死亡数は326人と発表しています。この原因として地球温暖化による平均気温の上昇が影響している、あるいは都会の一部にヒートアイランド現象という局所的な高温地域が発生するなどが考えられていますが、更には熱中症に対する抵抗力が弱い高齢者が多くなっている人口構造の変化とあいまって、今後の一層の増加が危惧されています。重症の熱中症の死亡率は、40%~60%に達するほど極めて危険なものですから本当に気をつけて行きたいものです。

なお、他県では夏場には熱中症119番を開設して、特別対応をしているところもある程です。

クールビズは夏の常識となるのか

今年の6月5日は「環境の日」と設定されて、美人代議士で知られる小池環境省大臣を先頭にたてて、華々しく「クールビズ新・夏の常識」とうたい、各界の名士をモデルにしてファッションショーがおこなわれました。会場はいま名古屋でやっている「愛・地球博」のEXPOドームの中でした。私の記憶に残っているのはモデルの一人の、あの前阪神監督の星野さんの突出した格好良さだけでした。ノーネクタイは全員共通で、あとノージャケットの人が半数といったところでした。

これが新・夏の常識となるかはなかなか難しいところも多いようです。なんといってもネクタイは男性にとり唯一ともいえるアクセサリーですし、頭にしめる鉢巻と同様に身を引き締める効果も無くはない点があるからです。営業社員の皆様に半袖開襟シャツに頭に鉢巻というスタイルを要求するのは恐らく冗談にでも無理でしょう。

しかしながら男性社員にはともかくとして、女性社員にとっては「クールビズ」は福音となるはずです。上着を脱いで、ネクタイをはずしたとき、体感温度は2℃下がるからです。

オフィスで冷房温度を28℃にするとどんな効果があるのでしょうか?環境省はこれだけで、地球温暖化の要因となる二酸化炭素をひと夏に約160~290万トン削減できるといっていますがこれはさておき、私は女性にとって大きな悩みの一つである冷房病についてお話したいと思います。

夏の寒い、辛い冷房病対策

「冷房病は冷え性の人がかかる病気だから私には関係ない」と間違った認識をしている人もいますが、両者はどんな違いがあるのでしょうか。

女性が一番「冷え」を感じるのは足と腰です。サーモグラフで身体の表面温度を測定する研究では、その他の場所とくらべ個人差はありますが、ひどい場合には1.0℃以上も差があるようです。しかし「冷え性」は体質であり、進行悪化するような病気ではありません。

これに対して冷房病は「自律神経失調症」の一種であり、病気なのです。

人間の身体は季節の移り変わりに伴う外気温の高低に応じて、自律神経の働きで血管や汗腺が閉じたり開いたりすることにより、37℃程度の一定になるようになっています。しかしこの身体の恒常性を保とうとする機能がせっかく夏モードとなって働いているときに、外気温5℃以上も差があるような冷房下に長時間いると、夏だか冬だか判らなくなりバランスが崩れてしまうのです。冷房病は俗称であり、自律神経失調症がその正体なのです。

頭痛、肩こり、眠れない

冷房で長時間身体が冷えると、血管が収縮して血流障害を起こし、細胞に酸素や栄養を十分に運べないことから、内臓の機能不全がおこります。血色が悪くなり、手足が冷える、しびれる、むくみが出る、肩こり頭痛がおこる、というようなことから始まります。また腸の蠕動運動もコントロールが崩れ、下痢や便秘に悩まされる人も出ます。頻尿、生理不順、腰痛、不眠などもその症状です。重症になるとメンタル面にも影響が出るなど、冷房病は結構深刻な病気なのです。

女性の身体は冷えやすい

女性の身体は本来体温が男性に比べやや低いことが多いのです。また月経周期による低温期があったり、熱発生源である筋肉量が男性にくらべ少ないなどから、どうしても冷えやすいことが多いのです。
また女性達の夏の衣裳はは男性のそれと比べとても冷えやすい格好をしています。
そして会社の中では、男性社員の体感を基準に冷房の温度設定が行われることが多いため、冷えやすい女性が冷房病の被害を受けることが多いのです。

終わりに

今年も暑い夏を迎えることになりますが冷房と健康の関わりを今一度考え、元気に過ごされるように産業医としてお願いいたします。

まず予防から始めましょう

冷房病予防には、社内ビルの温度設定を外気温度との差を5℃以内にするのが望ましいのです。そのためにも男性社員も「新・夏の常識 クールビズ」の採用を社内の女性たちの為にも決断して欲しいのです。

具体的には

  • 冷房温度はこまめにコントロールし、下げすぎないようにする。
  • ストッキングや余分に一枚羽織るもので防衛する
  • 特におすすめは、ぬるめの長時間入浴です
  • 食生活では冷たいものを飲み過ぎない。たんぱく質やミネラル豊富で、消化のよい旬のものを食べる。温かいものも時には意識的にとる
  • 睡眠ほか、生活習慣の乱れを少なくする。

以上

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